someone's notebook

誰かさんの書いたジャポニカ学習帳

人助けと通勤と

おばあちゃんを無理やり追い越すサラリーマン
対向車が来て危ない
オレは譲らなきゃと少しおさえて歩道を走った

先を行くサラリーマン
曲がり角で一瞬ぴくっとする
何かがあったのに気づいた
オレも曲がろうとする
車だ、急ブレーキをかけた

先を行くサラリーマンに助けられた
慌てて急ぐ人もいつもダメなわけじゃない
少なくとも自分は彼のおかげで危ない思いをする負担が少し減った

後ろについていこうと思った
次危ない時があっても、サラリーマンの方が先にきづく
車で狭い山路を運転してた際に祖父が前の車についていけば大丈夫と言ってたことを思い出す

身代わりというと語弊があるかもしれない
けれども、まあ、お手軽な防御策だ

後ろにピッタリだと怪しまれるので、つかず、離れず、車間距離を保つ

そうこうしてると最後の直線、駅まで一本道だ
もうサラリーマンは不要だ
電車の出発時刻は迫っていて、遅れると友人を待たせることになる

アディオス、サラリーマン
ギアを切り替え、思いきりよく走る

駐輪場に着いた
玉川上水駅モノレール下の駐輪場は雨風はしのげるが、そのせいでキャパシティを常に越えている(実際には駅近くの駐輪場はどこでもそうなのでここに限った話ではない)

ルール違反なのだが、駐輪場の外にとめるわけにはいかず、誰かの邪魔になってしまうのだが通路にとめた
少しの罪悪感を感じながらも、友人との約束を優先した

その時、駐輪場奥のおばあちゃんが目にとまった
一見しただけでは自転車を出そうとしているのか入れようとしているのかわからない

オレは時計を見た
先ほどのサラリーマンとの自転車競争のおかげでまだ少しだけ余裕があった

声をかけようか迷う
電車に遅れることはできない

ん?できない?
おばあちゃんを助けていたと友達に言えばいいし、それを咎めるような友達、オレと見ず知らずのおばあちゃんのどちらが大事かなどと言うような輩は、どのみちオレの友達にはいない

実は、上述のようなことをその場で考えてたわけではない
後づけの理由、口実だ

単に困っていそうなので声をかけることにした
次の電車でも間に合うかもしれないし、少し早めで路線検索していたので、きっと平気、なんとかなると、雑念をふりきった

おばあちゃんに聞く
「どうしました?」

返事がない
声は聞こえていても自分ではないと思ったのかもしれないし、単に耳が遠かったり、オレの声が聞き取りづらいせいかもしれない

「自転車は出すんですか?入れるんですか?」

すると、今度はおばあちゃんは答えてくれた
「出すんです」

「わかりました、ここの駐輪場、大変ですよね」と他の自転車をどかして、おばあちゃんの自転車を取り出した

「ここで大丈夫ですかね?」
「はい、大丈夫です」

安心してオレは駅に向かって走り出す
なんとかなるとは思ったが、できれば友人に言い訳したくない
少しだけ照れくさかったのもある

さっきのサラリーマンが駐輪場の前で横切った
まだレースは終わらないらしい

すぐに追い抜いて、息をきらしながらPASMOでびっとやる
サラリーマンは隣で引っかかった

オレは気になってふり返る
軽い勝利

もう一度試みるも、サラリーマンは通れない
なんか駅員だかに文句言いに行った

あれ、かわいそうというか運が悪い
たまたまハズレをひいたのかしら

喉が渇いた
ホームの反対側、階段のすみでなんだかむすっとただずんてるおばあちゃんがいた
なんだかわからないが、感じが悪い

自販機で水を買って、喉を潤す
電車が来た

ふと横を見ると、さっきのサラリーマンがいた
思わず笑ってしまった

サラリーマンはおばあちゃんを遠慮なく追い越したせいで車のドライバーにムッとされ、自身もヒヤリとする
そうかと思うと、意外と便利でいいとこもある
基本的には貧乏でガタガタの自転車なんだけど(オレのもガタガタだが)、脚力の力で一本道ならいつでも追い抜けたし、最後はそうした

オレは少しだけ早く駅に着いて、ちっちゃなよいことができた

自転車を降りたとしても、心も体も身軽なオレはさっと抜いてしまう

改札で引っかかったのは、運以外の何ものでもない
サラリーマンは何も悪いことはしていない
罰あたりなことしてないし、機械がそんなことを感知するわけがない

うまくやると余裕ができて、余計なことができる

ただそれだけ。

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